亀岡的プログラマ日記

京都のベッドタウン、亀岡よりだらだらとお送りいたします。

「"反"常識」とアジャイルとリーン -書評:「偶然の科学」-

まずはこちらをどうぞ

@dankogaiさんの書評。まずはこれをみればどんな感じの本かは分かる。*1

概要

  • 「常識」は思っているよりも不正確。それは種々のデータを使って示すことができる
  • 「常識」とは、言ってみればある課題に対する「一見もっともそうに見える」「立派な」仮説である。そのもっともらしさ、立派さに騙されることが多いが、思いの外それは間違っている。
  • 「常識」から離れ、「"反"常識」になることが必要である。それには、①実際の統計データによる検証、②集合知の利用、③経験知の利用、といったアプローチが有る。
    • (これは僕の感想)これらは、アジャイルやUXが定める価値と驚くほど一致する。

もうちょっとだけ詳しく

詳細書くとネタバレがひどくなっちゃうので、そこまで書きませぬ。だってすげーですよ、目からボロボロですよ、鱗が。

「常識」は間違っている

例として取り上げられているものを一つだけ。臓器提供意思の比率(yesかNoか)を調査すると、ヨーロッパ各国でかなり異なるそうです。最も差のある二カ国、これをA国とB国としましょう。A国の同意率が10%台なのにB国は99%を超えます。さぁこの違いは??

・・・、答えは読んでいただくとして、なんとなく頭に浮かぶであろう

  • 教育の差
  • 社会システムの違い
  • 旧共産圏か否か
  • 移民やジプシーに寛容か

などなどは、全く関係ありません。関係あったとしても誤差の範囲内。社会システム何も関係ないのです。

なぜ「常識」はこれほど一般に受け入れられているのか

なぜ、人は常識を盲信してしまうのか。いろいろ言葉を尽くして書かれていますが、結局は、結果を見てそれに対する説明付をするのが抜群にうまい人間の特性ゆえ、という感じがします。 たとえそれが偶起こった結果だったとしても、ひとはその結果にもっともらしい意味を付けたくなるのです。そしてそれを「歴史」として学んだ時、それは「常識」となってしまうんですね。

和書タイトルの紛らわしさ

ちなみに、この疑問は、洋書タイトルが割りと全てを物語っているように想います。洋書のタイトルは、

"Everything is obvious.(Once you know the answer)"

なのだけれど、これは直訳すると

"全ては明白である(ただしその答えを知っている場合に限る)"

つまり『結果がわかっていれば、全てが自明で、当たり前に見えてしまう、そんな説明を易易と思い浮かべてしまう』、という意味になるんですね。 結果から推論することの無意味さを示す良いタイトルなんだけれど、それを「偶然の科学」と訳すとなぁ・・・

「"反"常識手法」

じゃあ、その軛から逃れるためにどうするのか?という答えは、

Don't think, Experiment(考えるな、実験せよ)

ということになるわけです。

とはいえ、社会科学で起こる事象なんて大規模なもの、実験できるのか?となりますが。。。

著者は社会科学者の中でも異色です(なんたって現所属はMicrosoft Researchで前職はYahoo!のラボだ)。その手段は、Amazonクラウドソーシングで無作為に人を集めて実験したり、YahooのトップページでA/Bテストを実施したりして、「常識」と思われた結果が、ファクターの一つでしかなく、多くの結果は「偶然」や「些細な前提条件」に驚くほど支配されていることを解き明かしていきます。

そう、これを聞いてLean Startupを思い浮かべない人はいないわけで、そこにまず興奮したのですが。

他の実践的な、常識を使わない手法として

  • 「仮想市場」などの集合知空間に課題を投げて集合知を利用する
    • (お?見積もりポーカーか?)
  • 組織の経験値・ベストプラクティスを探し共有する(ブライトスポット)
  • 失敗時に組織全体が停止する仕組みを作るなどし、現場自らが改善活動を行う(ブートストラップ)
    • (あんどん!TPS!TPS!)

などなど、アジャイルの文脈で使われる物の多いこと多いこと。 この辺りの興奮っぷりを、みんなにも味わって欲しいなーと思います。

締めが超絶かっこいいの

著者は、ITの発展により、ようやく実験に基づいたアプローチが出来るようになった、と説いています。 それはつまり、

"我々はようやく自分たちの望遠鏡を手に入れたのである"

ということなのです。そしてそれはきっと私達も似たような境遇のはずで。

"さぁ、革命を始めるとしよう・・・"

がんばります。

*1:そして以下は読まなくて良くなるので別タブで開いて後で読んで欲しい←